【本】ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
英国在住のライター・保育士であるブレイディみかこ氏が、一人息子の学校生活や家族の日常を通して、彼らをとりまく英国社会の今を描いたエッセイである。 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー /新潮社/ブレイディみかこ posted with カエレバ 楽天市場 Amazon 多様性のほろ苦さ 日本で大きな話題になったという噂は耳にしていたが、実際に読んでみると、もっと多くの日本人に読んでもらいたいと強く思う一冊だった。 筆者たちが住むブライトンは英国の中でも住民の貧富の差も激しく、低所得の白人を中心に多様な人種が混在している地区である。カトリック系の小学校を卒業して公立の元最底辺ランクだった中学に進学した息子は、これまでと異なる経験や価値観、友人との出会いを重ねていく。その様子が淡々と、かつユーモアを交えて綴られている。彼の聡明さと素直さに感嘆するとともに、親子のやりとりに頷かされることも多く、あっという間に読み進めてしまった。 アメリカに来て数年が経つが、海外で生活することで得られるもっとも大きなものは、多様性というものに直に触れられることだと日々感じている。こう書くとサラッとしているが、空気を読み、文脈を読む文化で長年育ってきて、それまで自分がいかに「●●しなくてはならない」「普通は●●するよね」「これぐらい分かって当然でしょう」「流行はこれを押さえておけばOK」といった価値観にとらわれ、かつ守られていたか、そして一歩世界に出ていくとこれらの価値観はいかに簡単に打ち砕かれていくかということを痛いほど感じたものである。 この世界で、さて自分はどう生きる? さらに、多様性の大きな波が押し寄せて来たときに、頑なに跳ね返すのでも、自分の殻に閉じこもってしまうのでもなく、この世界の中で、自分は何を得てどうやって生きていこうか?ということに真摯に向き合っていけるかどうかが世界で生きていく鍵ではないかと思う。 自分の中心には決して折れない芯を育て、表面はふんわりと多様性の波に柔軟に対応できるような、そんな強さを生み出せたら万々歳である。 補足すると、ある程度の年齢を過ぎてからでは、このような多様性への耐性をつくることは簡単ではない。私だって30代後半で渡米して己の自意識や常識と眼の前の世界とのギャップを埋めるのに苦労は多い。 よって、10代、20代、できるだけ...