【本】世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 /光文社/山口周 posted with カエレバ 楽天市場 Amazon 経営と美意識の深い関係とは? 著者の山口周氏は電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループのシニア・クライアント・パートナーを務めている。 本書によると、近年イギリスの有名な美術系大学院大学ではグローバル企業の幹部候補の社員を対象としたトレーニングプログラムを拡大しているそうである。 その目的は経営にこそアートから学べる視点、つまり「美意識」が必要、ということだ。本書ではなぜ経営に美意識が必要なのか?を様々な視点から分析している。文章がとても論理的に組み立てられており、なぜ?と考えながら次の章で納得して…と読み進められ、非常に興味深い一冊だった。 本書では「経営の美意識」を、「いわば『懐の深い概念』」として、つまり「様々な企業活動の側面における『良い』『悪い』を判断するための認識基準」として用いている。 具体的には社員を鼓舞するビジョンであったり、企業倫理や行動規範の判断基準であったり、自社の強みや弱みにあわせた効果的な経営戦略を形作る価値観、最後に文字通り製品やコミュニケーションにおける美意識といったことである。 まとめると経営における「真・善・美」を判断するための認識のモード、ということになる。 経営に「美意識」が求められる背景 この背景として、近年の企業経営が「サイエンス」に偏った経営に陥ることによる業績悪化やコンプライアンス違反を生んでいる状況を挙げている。実際に小さくとも「経営」に関わっている身としては、筆者の言わんとすることは非常に良く理解できる。 経営に美意識が必要な理由として筆者は3つのポイントを挙げている。 論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある 現代社会では経営の意思決定において、分析や論理だけでは判断が難しい状況が多すぎるにもかかわらず、判断基準が論理に偏りすぎていること、それにより判断スピードが停滞すること、さらに論理はパターン化してしまい他社との差別化等ができなくなることに筆者は警鐘を鳴らしており、論理に加えて重要な判断基準となるのが美意識による直感だと述べている。 経営学者ミンツバー...