【本】打ちのめされるようなすごい本

ロシア語通訳、エッセイスト、作家として活躍した米原万里氏の書評を集めた一冊。



曲がりなりにも書評を定期的に書き始めた身として学ぶべきところが多いだろうと手に取った。

彼女の著書を読むのは初めてだったが、読み始めてすぐ、これまで未読だったことを後悔した。
なんと強くて賢くて面白くて美しい人。

国際情勢や歴史、さらに文学にまで多岐に渡り、非常に広い知識と知見と深い思考を持つ彼女の言葉は、読んでいるだけで時空を超えた経験をしているような学びを得られる。
しかも、行間からにじみ出る魅力的なお人柄も楽しみながら。

時に悲しいほど脳の衰えを感じる昨今だが、一冊の本に対する米原氏の言葉たちを夢中で追いかけると「知性」という筋肉がうっすら積み重なっていくような喜びを感じる。

現実世界で、こんなに素敵な少し人生の先を行く先輩に、グラスを傾けながら色んな分野の話を聞かせてもらえたらどんなに楽しいだろう。
本を読むだけでそんな体験が出来ることはこの上ない喜びだ。

幼少の頃からの海外での経験は思わず我が家と重ね合わせて読んでしまう。

文中で、通訳にはどれくらいの語学力が必要かと聞かれ、両方の言語で小説が楽しめるぐらいと答えているが非常に合点が行く。コミュニティカレッジで現地大学生と一緒の英文学の授業を一度だけ履修したが、多くの文章をひたすら読んだ中でダントツで辛かったのは文学だった。聞いたこともない形容詞、訛りの表現など、辞書で意味を調べては「何だ、こんな意味なの?」とわざわざ調べた時間を取り返したくなるような、二度と使わなさそうな言葉のオンパレード。
少女時代、好奇心の赴くままに本を読みまくった米原氏がかくも引き出しの多い大人になったのはなるほど納得が行く。

インターネットで何でも調べられる現代人が本を読まなくなるのも仕方ないのかもしれない。でも、やっぱり、筋トレをしないと筋肉がつかないように、読書などのインプットをしないと思考って深まらないのではないか(決めつけてるわけではないが…)。

最後に、かくも素敵な女性が若くして他界されたことは非常に残念だが、近年問題視されている癌の代替療法や某医師に関して力強く筆を取られている姿に、病に倒れても最後まで自分の人生の手綱を握り続けるという気迫を感じ、私もかくありたいとまたも憧れを抱くのだった。



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