【本】精神科医が教える ストレスフリー超大全――人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト

 精神科医の樺沢紫苑氏による、現代社会で科学的に「ラクに生きる方法」をさまざまな観点からまとめた1冊。


手にとった理由

2020年のはじめ、いくつかのことが重なりメンタルヘルスについての勉強を少ししたほうがよいかな、と思っていた。

その後コロナウィルスの流行に乗って、今までに無かったようなストレスを感じることが増えた。

前からストレスを感じることはもちろんあったが、若さゆえの気力体力、そして趣味のコーラスや友人とのたわいないおしゃべりなど、発散できる要素が今思えばたくさんあった。

しかし対面の機会が限られコロナ禍で溜まったストレスをうまく消化することができにくくなったと感じたこと、そして自殺のニュースを聞く機会が増え、社会全体に今までにないストレスが蔓延している感覚もあったため、一度メンタルヘルスというものに体系的に向き合ってみたいと思い本書を手にとった。


「7時間睡眠」「朝散歩」「食事」の重要性

本書は以下の項目から成り立っている。

序章:すべてのベースとなる解決法
1章:他人ではなく「自分」を変える
2章:「仲間」と「家族」が活力となる
3章:「天職」を求め、「やらされ仕事」から抜け出す
4章:「疲れない体」を手に入れる
5章:心を整え、「新しい自分」にアップデートする

序章ではすべてのベースとなる心の不安の解決法として、不安はTo Doなどを活用したりとにかく行動で取り除くこと、「悩み」があれば自分で解決策を調べるか然るべき人に相談するかの2つしかないこと、うつ病の予防のため規則正しい生活をすること、の3つのポイントが紹介されている。

規則正しい習慣として筆者は「7時間睡眠」と「朝散歩」、「食事」の重要性を説いている。

朝散歩は起きて1時間以内が良いらしいが、期せずしてこの3点はステイホーム生活になって向上した生活習慣でもある。これらの習慣のおかげでなんだかんだいって健康な精神を保てているのだと実感した。


人間関係のコツ

人間関係についてかかれた章では、実際にあったことを思い浮かべながら学びを得られたことが複数あった。

・人との信頼関係が形成されるのは3ヶ月〜数ヶ月

・テイカーよりもギバーになれと言われるが、自己犠牲の上になりたつギバーになってはいけない。他人を思いやるのと同様に自分自身の健康や自分の精神状態への思いやりを忘れてはいけない。

特に参考になったのは、「対人関係の三重円」という考え方だ。

「多くの人は、最も外側の人とも親密な人間関係を築こうとしてしまい、多くの精神的エネルギーを浪費し、精神的に疲れ果ててしまいます。ときにはうつ病に陥ることもあるでしょう。外側の人間関係は、ボチボチでよいのです。」

さらにテクニックとして「本音」と「感情」を分けて伝えることが大事だというのも納得した。

「『感情』と『本音』を一緒に伝えると、おそらく『マイナスの反応』が帰ってきます。」

他にもここには書かないが具体例と照らし合わせて非常に腑に落ちたり、迷宮に光が差すような内容が多かった。人間関係のストレスを感じている方は、ぜひ手にとってほしい。


パートナーシップと仕事

パートナーシップについての章では
「成功の秘訣は?という質問に対して、私はいつもふたつあると答える。1つは健康であること。もう一つは、夫婦円満であること」
という作家スティーブン・キングの言葉が紹介されている。

筆者も、「仮に職場の人間関係は最悪でも、家に帰ってほっとできればそれでいいのです」と書いている。
睡眠、朝散歩、食事、夫婦・家族関係と、今の所メンタルを支える要素が良好で胸をなでおろす。

現時点でパートナーシップにストレスを感じる方のためにも、向上のための非常に具体的な方法も多数書いてあるので参考になると思う。


仕事についての章では、Amazon創業者ジェフ・ベソスの「2枚のピザ理論」が興味深かった。
チームの仕事を効率的に行うのに適切な人数はピザ2枚でまかなえる人数。つまり5〜8人。10人を超えるとチームワークが破綻する可能性が高いという。

筆者は、職場は(いろんな人がいるのだから)人間関係が悪くてあたりまえだが、その範囲の人数であれば「全員と仲良し」もありえるという。
人により解釈は異なると思うが、少なくとも私は、客観的な視点を与えてもらえてよかったと思う。


いつでも読み返したい1冊

以上、印象深かった箇所を紹介したが、本書では加齢や死への恐怖への向き合い方、HSPやADHDなどの特性との向き合い方、生きがいや天職を探す方法など、筆者自身が「本書は『生き方の決定版』を作ろうという企画からスタートしました」とあとがきに書いている通り、非常に幅広い切り口でよりよい生き方を目指すためのヒントが網羅されている。

ちょっと心がつかれたときには、「家庭の医学」のように手にとって読んでみたいと思う。


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